ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)、日本電気株式会社(以下「NEC」)および先頃Broadcom Inc.による買収が完了したVMwareの3社は、モバイルネットワークのフロントエンドである無線アクセスネットワーク(Radio Access Network、以下「RAN」)の仮想化による共同検証を実施し、O-RANアーキテクチャー(*1)とテレコム クラウド(*2)の融合によるRANのモダナイゼーション(システムの最新化)の実現性を確認しました。
今回の共同検証では、仮想化されたRAN(virtualized RAN、以下「vRAN」)のシステムにおいて、ソフトバンクが要件定義した汎用性の高い共通のインフラストラクチャーと、O-RANアーキテクチャーを採用したNECのvRANアプリケーション、テレコム クラウドに最適化したVMwareのvRANプラットフォームを使用しました。
共同検証で使用したvRANアプリケーションは、従来のBBU(Baseband Unit)で担っていたRANの通信機能がCU(Central Unit)とDU(Distributed Unit)に分割され、コンテナ技術により仮想化されています。また、O-RANアーキテクチャーを採用することで、それらはO-CU(*3)とO-DU(*4)としてvRANプラットフォームであるO-Cloud(*5)に搭載されています。さらに、テレコム クラウドに最適化されたvRANプラットフォームは、クラウドネイティブ技術(*6)を採用することで、RANアプリケーションの構築と最適化を高度に自動化しています。 共同検証の結果、従来のRANシステムからvRANシステムへモダナイゼーションすることで、ネットワークオペレーションの共通化や効率化が実現できることを確認しました。具体的には、O-RANアーキテクチャーを採用することで、設計・調達から構築・運用までオープンで共通化されたオペレーションが実現可能なことを確認しました。また、テレコム クラウドに最適化することで、スケーラブルなRANシステムの構築・運用が可能となり、スマートで効率的なオペレーションが実現できることを確認しました。
役割分担
検証内容
商用環境を模した検証環境を構築し、下記の内容を検証しました。
- CU/DU/RUについて、O-RANアーキテクチャーに沿った基本的な通信処理を確認
- リアルタイムOSを利用したDUの低遅延処理と低ジッター処理を確認
- PaaSの高度な自動化機能によりRANシステム構築の効率化を確認
- PaaSのヒーリング機能によりキャリアグレードの堅牢性を確認
- PaaSのスケーリング機能によりスケールアウトを容易にできることを確認
- IaaS/CaaSのマルチテナント機能を利用したオペレーション共通化を確認
※検証内容の詳細は別紙を参照
各社のコメント
ソフトバンクの常務執行役員 兼 CNO(最高ネットワーク責任者)である関和智弘は、次のように述べています。
「お客さまに低廉・高品質なモバイル通信を提供することを目的に、ソフトバンクではこれまでもさまざまな最新のRANテクノロジーの導入を進めてきました。今回3社で検証した仮想化、O-RAN、テレコム クラウドによる革新的なRANモダナイゼーションは、将来的に効率性の高いRANオペレーション実現の核となる技術であると確信しています。一方で、通信サービスによるマネタイゼーションの劇的な改善が期待できない今日、デジタルツインなどを用いた商用ネットワーク全体のモダナイゼーションによる運用効率の改善は通信事業者の最大の課題ともいえます。ソフトバンクは、ネットワーク全体のモダナイゼーションの実現をゴールとし、今回検証した技術をこの取り組みの中でどのように最適化していくかという次の課題も含め、今後もその解決に向けた活動を継続していく予定です」
NECのCorporate SVP 兼 ネットワークソリューション事業部門長である佐藤崇は、次のように述べています。
「柔軟なモバイルネットワークを実現するためには、O-RANに対応した仮想化ソフトウェアソリューションの展開が必要です。この検証では、NECのvRANアプリケーションがVMwareのvRANプラットフォームをサポートすることでエコシステムを拡大し、通信事業者のオペレーション効率化に貢献したことを示しました。今後も3社共同で、マルチテナント統合クラウドプラットフォームとアプリケーションとの組み合わせにより、ネットワークの価値最大化を目指します。NECは、完全にコンテナ仮想化されたRAN/モバイルコアのアプリケーションを提供し続け、柔軟で高性能なモバイルネットワークソリューションを提供します」
Broadcom Inc.のSoftware-Defined Edge Divisionの副社長 兼 ゼネラルマネージャーであるSanjay Uppalは、次のように述べています。
「ソフトバンクおよびNECとの共同の取り組みは、ソフトバンクのネットワークをさらに効率化し、変革を加速させることになるでしょう。スピードはすべての通信事業者にとって最優先事項です。PaaS(VMware Telco Cloud Automation)の統合オーケストレーション機能は、NECのRAN展開において、急速に進化するCNF(cloud-native network function)要件を通信事業者が迅速に展開できるようにします」
注記
*1 O-RANアーキテクチャー:オープン無線アクセスネットワーク(O-RAN)は、さまざまなベンダーによって開発された、モバイルネットワーク機器間の相互運用性を実現するRANの一種です。O-RANアーキテクチャーは、O-RAN ALLIANCEで定められているRANの機能分割要件に沿っていることを示しています。
*2 テレコム クラウド:テレコム クラウドとは、通信事業者がモバイルネットワークとデータ転送機能を本番運用に大規模に展開して管理するために必要なデータセンターリソースです。従来テレコム クラウドは、プライベートデータセンター施設に置かれ、3Gおよび4G/LTEネットワークの通信要件への対応に使用されています。現在は通信事業者コミュニティー全体に5G機器が国際的に展開されているため、ベンダーはネットワーク機能の仮想化(Network Function Virtualization)およびSoftware-Defined Data Center(SDDC)の管理に向けた戦略を採用しています。この戦略により、通信事業者に必要な運用ソフトウエアの展開を効率的に行うことができます。
*3 O-CU:O-RAN ALLIANCEで規格策定されているvRANアプリケーション、CUのオープン規格。
*4 O-DU:O-RAN ALLIANCEで規格策定されているvRANアプリケーション、DUのオープン規格。
*5 O-Cloud:O-RAN ALLIANCEで規格策定されているvRANアプリケーションを搭載するためのプラットフォームのオープン規格。
*6 クラウドネイティブ技術:パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドなどの最新の動的環境で、スケーラブルなアプリケーションを構築して実行する技術であり、本資料ではコンテナ化されたアプリケーションとそれを実行管理するKubernetesのプラットフォームのことを指します。
別紙
今回の共同検証では、vRANにおけるソフトバンクのインフラストラクチャーと、NECのアプリケーション、VMwareのプラットフォームを組み合わせ、商用のRAN環境を模したユースケースでの構築検証と、O-RANアーキテクチャーの基本的な通信処理を含むエンドツーエンドの動作検証を実施しました。特に、コンテナベースで仮想化されたNECのアプリケーション(CU/DU)と、コンテナ基盤のデファクトスタンダードであるKubernetesを採用したVMwareのプラットフォーム(VMware Telco Cloud Platform RAN)の組み合わせはクラウドネイティブ技術を用いており、先進的なソリューションです。低遅延処理、低ジッター処理の要件を持つDUに対しては、VMwareが開発したリアルタイムOS(Photon OS)を利用して構築することで、モバイルフロントホールで求められる厳しいパフォーマンス要件を満たし動作することを確認しました。
NECのvRANアプリケーションの性能を最大化するために、PaaS(VMware Telco Cloud Automation、以下「TCA」)の特徴である、CSAR(Cloud Service Archive)を利用したダイナミックインフラプロビジョニング機能を活用します。テレコム クラウド業界標準のIaC(Infrastructure as Code)を利用することで、従来の手動構築と比較して少ない学習コストでインフラリソースの最適化とアプリケーションの構築自動化を行い、効率的に行えることを確認しました。大規模で多拠点にvRANを展開する際には、vRANシステム全体の構築自動化にTCAを適用することで、より効果的なソリューションとなります。
さらに、TCAの強力な統合管理機能を活用することにより、高いサービスの継続性を保つために、vRANインフラストラクチャーやアプリケーションのヒーリングを自動的に行うことが可能です。これにより、障害耐性が高まり、キャリアグレードの堅牢性につながります。また、通信需要の増加に伴う設備投資をする際には、vRANシステム全体の安全で容易なvRANインフラストラクチャー、アプリケーションの拡張も実施できるため、通信事業者にとって利便性が高く運用コストが低減できることを確認しました。
また、高品質な通信とサステナブルなモバイルネットワークを実現する上では、同一のCOTSサーバー上で異なる要件のアプリケーションを安全かつ複数稼働できるマルチテナント機能が重要な要素となりますが、今回の検証においてCaaS(VMware Tanzu)およびIaaS(VMware Cloud Foundation)でその機能が効果的に動作することを確認するとともに、電力削減や運用コスト削減に寄与できることを確認しました。
これらにより、O-RANアーキテクチャーのオープン化とテレコム クラウドに最適化されたクラウドネイティブ技術のエコシステムを生かし、通信事業者にとって運用性・コスト効率の面で優れたソリューションを実現していきます。
Broadcomについて
Broadcom Inc.(NASDAQ: AVGO)は、半導体から企業向けソフトウェア、セキュリティ ソリューションまで幅広く設計、開発、提供するするグローバル テクノロジ リーダーです。Broadcom の製品ポートフォリオは、クラウド、データ センター、ネットワーキング、ブロードバンド、ワイヤレス、ストレージ、産業、企業ソフトウェアなど、重要な市場分野にわたります。またソリューションには、サービス プロバイダーや企業のネットワーキングおよびストレージ、モバイル デバイスおよびブロードバンド接続、メインフレーム、サイバーセキュリティ、プライベートおよびハイブリッド クラウド インフラストラクチャなどが含まれます。Broadcomは、米国デラウェア州に設立され、カリフォルニア州パロアルトに本社を置いています。Broadcomの詳細はwww.broadcom.com をご覧ください。